対人恐怖症だと会話や雑談(とくに目的のない話)が苦手になったりします。
または対人恐怖症になってからさらに苦手になった方もいるでしょう。
わたしも視線恐怖症や咳・咳払い恐怖症などを原因として会話がうまくできないと感じることが少なくありません。
自分の目つきが相手を不快にしないかとか、自分の緊張感のせいで相手が咳払いしないかとか妄想すると話に集中できなくなったりします。
そんなときわたしが実践しているのが、以下の6つの方法です。
「会話・雑談ができるようになりたい」「会話力をつけたい」という対人恐怖症(視線恐怖症など)の方は参考にしてもらえればと思います。
1. 会話の妄想をしない
わたしたち対人恐怖症者・視線恐怖症者は何にでも悪い妄想をして、自分の行動に制限をかけがちです。
会話や雑談においても、その前後や最中におかしな思い込みをしないことが大切でしょう。
「話しかけるタイミングがわからない」
「次はどんな発言をすれば良いのだろうか」
「自分のせいで会話が変な雰囲気になった気がする」
などの悩みは、すべて相手の反応を妄想しすぎるために生じます。
わざわざ自分でハードルを上げているようなものですね。
会話の必要があるなら、あれこれ考えずに話してしまって構いません。
もちろん相手への配慮は必要ですが、そのあたりも対人恐怖症者は神経質に考えすぎです。
過度な気づかいはコミュニケーションを息苦しいものにします。
複数人の会話・雑談に混ざる場合も同様でしょう。
「自分が発言したら場の空気を壊すかもしれない」と妄想するから会話に入りにくくなるわけです。
おしゃべりがしたいのなら、その気持ちのままに余計なことを考えず話し始めてみてください。
2. 話をしっかり聞く
ありきたりな方法ではありますが、対人恐怖症に悩んでいるなら強く意識しておく必要があるでしょう。
会話中・雑談中に自分の症状を気にしてばかりではいけません。
たとえば自己視線恐怖症なら自分の目つきに注意が向かいがちですが、相手の話に意識を戻してください。
話を聞いていないほうが、相手はこちらをジッと見てきたりするものです。
「ちゃんと話を聞いてる?」と。
対人恐怖症者にとっては多かれ少なかれ緊張が走る瞬間ですね(汗)。
会話相手の話をしっかり聞いていれば、そうした緊張をしなくて済みます。
話をよく聞けば聞くほど相手の目が気にならなくなり、結果として自分の症状のことにも注意が向かなくなるのです。
そしてさらに話に集中できるようになり、会話がうまく回っていきます。
そもそも一般的な会話術の基本として、話すよりも聞くことのほうが大切です。
可能であれば、じっと耳を傾けるだけでなく適度にあいづちを打ったほうが良いでしょう。
相手の発言内容をしっかり聞いていれば相手に好印象を与えるだけでなく、こちらの発言内容が簡単に浮かんできます。
質問したり関連する話題を挙げたりして会話がテンポよく盛り上がっていくはずです。
3. ハキハキと話す
自分のできる範囲で構わないので、会話中はハキハキと話しましょう。
吃音症(どもり)の方には難しいかもしれませんが、ハキハキしゃべろうと意識して会話をするだけでもかなり違いますよ。
対人恐怖症者・視線恐怖症者は自分に自信がないせいか、ボソボソと話しがちです。
しかしそうした声の出し方では、会話相手はこちらの話にあいまいな返事をするか、聞き流すしかありません。
それでわたしたちは「無視された」と感じ、さらに会話力に自信がなくなってしまいます。
相手に話を聞いてほしいなら、こちらの話す態度を変えましょう。
無理に声を大きくする必要はなく、声を伝えようという意識で話すのがコツです。
声が小さくても、ハキハキとした話し方なら相手は聞き取れます。
ハキハキと話そうと気にしすぎて無駄に緊張してはいけません。
声が震えてもかまわず、会話の相手に自分の話を伝えようと心がけてください。
滑舌よくしゃべれなくても、ハキハキと相手に話そうという意識を持っていれば十分です。
ただ、話すことにばかり注意するのも禁物です。
一方的な会話になりがちで、相手を尋問するような雰囲気にもなりかねません。
まずは話をしっかり聞くようにしましょう。
4. 無理に目を合わせない
会話術のハウツー本などでは「目を合わせて話そう」などと書かれていたりしますが、対人恐怖症者は無理に合わせなくて良いでしょう。
緊張してしまい、かえって会話はもちろん軽い雑談さえもギクシャクしてしまいますからね。
正視恐怖症や自己視線恐怖症ならなおさらです。
無理に目を合わせようとしなくても、会話に集中していれば自然と適切な頻度で目が合います。
それだけでOKです。
こういうスタンスでいれば緊張しませんし、会話がリラックスしたものになります。
また、2.と同様の話ですが、目を合わせることばかりを気にしていると相手の話に注意が向かいません。
この点でも、目を合わせようと努力しないことが大切です。
それに脇見恐怖症や自己視線恐怖症をわずらっている場合、 目を合わせようと意識しすぎるのは症状改善に悪影響があります。
自分の視線の置き所は考えないようにしましょう。
5. 無理に会話を続けない
無理して会話や雑談を続けようとしないことも、ひとつの方法です。
矛盾しているかもしれませんが、この心構えでいることで結局は会話できるようになります。
わたしも含め対人恐怖症者には八方美人な性格の人が多いのではないでしょうか。
なので自分からは会話を終わりにできず無理して続けようとしますが、そうした姿勢は会話の苦手意識を大きくしてしまうだけだと思います。
また、話す内容が浮かばないことへの緊張や不安は対人恐怖の病状に悪影響を与えないとも限りません。
言葉が出てこないのなら、そこで話を終わりにして良いのです。
間が持てない・沈黙がこわいと感じても、こちらが気を使って会話を続ける必要はありません。
無理に話そうとすると、失言をして気まずい空気になる恐れもありますからね。
相手が会話を続けたければ、むこうから別の話をしてくるでしょう。
無理に話し続けなくて良いと思っておけば、緊張感がなくなりかえって話すネタが浮かんでくるものです。
言葉が出ないことに余計な不安を抱かなければ、そのうち自然と言葉が出てきます。
6. 会話を避けない
会話・雑談ができるようになるには、それらをできるだけ避けないことも大切です。
人と話すことから逃げていると会話力・雑談力が低下していきますし、人そのものを避けているので対人恐怖症もどんどん悪化していってしまうでしょう。
また長いあいだ誰とも話していないと、声が出ない・出にくい状態になる恐れもあります(声帯が退化してしまう)。
会話への苦手意識があっても、人と話したくない気分でも、機会が訪れたら逃げずに話してみましょう。
たとえば学校のクラスメートや会社の同僚と出くわしたら、あいさつをするだけでも話す練習になります。
なかには冷たい態度をとってくる人がいるかもしれませんが、そこで自分を責めたり再び会話を避けるようになってはいけません。
その人はそういう性格というだけであって、次からはこちらも無理に話しかけなければ良いだけです。
ほかの人とは今までどおりの会話をします。
複数人との会話(雑談)が苦手な場合も同じく、その場から逃げないようにしましょう。
人の話をだまって聞いているだけでも、はなから会話に参加していないよりは会話力を鍛えられます(2.や4.の訓練になります)。
話したいことが浮かんだら話してみるという姿勢で十分です。
上記1.~6.の方法を心がければ、視線恐怖症などの対人恐怖症であっても少しずつ会話・雑談ができるようになるかと思います。
会話力向上のテクニックはほかにもいろいろとあるでしょうが、わたしたちにとって大切なのは相手としっかり向き合いつつも無理せず話すことです。
対人恐怖症そのものの改善にもつながりますので、まずはこれら6つの方法を実践してみてください。