対人恐怖症で苦しみながらも公務員試験を突破しましたが、就職後わずか半年たらずで公務員をクビになりました。
原因はやはり対人恐怖症
視線恐怖症咳・咳払い恐怖症がつらくて何度も休暇をとったり遅刻をしたりしたため、採用を取り消されたのです。

新規採用から6カ月くらいで退職することになった経緯を書いてみます。

初出勤後まもなく自主退職を願い出る

「公務員をクビに」などと被害者のような書き方をしましたが、当初は自分から退職を願い出ました。
しかも初出勤後2日目にして上司に自主退職を願い出たという(汗)。

対人恐怖症の症状がひどくて仕事が全然できないと思ったからです。
視線恐怖症と咳・咳払い恐怖症で悩む自分にとって、大部屋主義の職場は生き地獄のようなものでした。
大きな部屋にたくさんのデスクが並べてあり、パーティションなどの目隠しはまったくありません。
周囲の同僚の視線が気になるわ咳や咳払いにいちいちビクついてしまうわで、ほとんど業務に集中できませんでした。
そんな状態で働き続けられる自信がないので、自主退職の旨を伝えたわけです。

しかし上司は退職願いを受け入れてくれませんでした。
驚いた様子で、「せっかく公務員になれたんだからすぐに辞めるのはもったいない」と。
新卒で入ってくるやいなや辞意を伝えたのですから驚かれるのは当然ですね(苦笑)。

そこでなんとか上司を説得しようと自分の病気を打ち明けたところ、病気休暇を提案されました。
1カ月の休みをとったところで何も変わらないと思いましたが、両親が心配していたこともあり、ひとまず病気休暇に入ることになります。

心療内科に通い始める

公務員をクビになる

病気休暇を取る際、心療内科を受診しました。
休暇を認められるには医師の診断書が必要だからですね。
大学生のころ以来ひさびさの受診です。
医師からは自律神経失調症と診断されました。
本当は対人恐怖症と診断してほしかったんですが、職場復帰に配慮をしてそう表現したんでしょう。

病気休暇に入ってからは、ただ自宅でゴロゴロしているだけでした。
パキシルやレキソタンなどの精神安定剤を飲んでいたものの、療養というよりただ家にいるだけ…。
対人恐怖症の症状は根深く、リハビリのため外出する気になかなかなれなかったんです。
そんな感じなので病状が良くなるとは思えませんでしたが、ひとつだけ希望がありました。

休暇明けの新規採用職員研修です。
この研修をつうじて同期と仲良くなることで公務員を続ける意欲が出るだろうと考えていました。
新社会人として一緒に頑張る仲間がいれば、仕事がつらくても乗り越えていけると思ったわけです。

新規採用職員研修で病状が少し改善

自分の期待どおり、新規採用職員研修ではたくさんの同期と友だちになれました。
もちろん研修をつうじて公務員としての責任感も芽生えた気がします。
この調子で進めば公務員人生を楽しめるかもしれないと思えたものです。

あいかわらず対人恐怖症の症状はありましたが、不思議なことに苦しみはさほど感じませんでした。
仲間がいるという安心感が病状の改善につながったのかもしれません。

人はこわいけど、職場にはともに頑張る同期たちがいる。
そう思うと、働き続ける意欲が湧いてきます。
職場に復帰したらまた頑張ってみようと、やる気が高まりました。

有給休暇や遅刻を繰り返す

しかし、そういったモチベーションはすぐになくなってしまいました…。
対人恐怖症を抱えながら仕事をするのはやはりつらい。
復帰後も周囲の視線は気になるし、咳にも咳払いにも神経質になってしまいます。
病状が少しも改善していなかったことを悟り、働く意欲はどんどん減ってしまったのです。

結果、病気を理由として有給休暇を何度もとるようになりました。
出勤前に上司に電話をし、「今日は体調が悪いので休みます」。
勤務中に病状が悪化すれば、「しんどくなってきたので午後は休ませてください」。

遅刻もよくやってしまいました。
心療内科からもらった安定剤のせいか、出勤前に異常な眠気に襲われてしまうのです。
もともと職場に行きたくないという気持ちもあいまって、全身がだるくて仕方がない状態でした。
上司に休みの連絡をする気力もわきません。
あとで上司から連絡が来てあわてて出勤するというケースが何度もありました。
始業時間から1時間後に登庁するなんてざらで、新人なのに重役出勤のようなありさまです。

こんな状態をみて上司は時折、「これ以上の休みや遅刻が続くと本採用が危ないよ」と忠告してくれました。
公務員も民間企業と同じで試用期間があるからです。
条件付き採用期間という制度で、採用後6カ月の勤務成績しだいで本採用の判断が行われます。
試用期間中に有給休暇や遅刻を繰り返すと採用が取り消しになるよ、と上司は助言をしてくれたわけですね。

そんなありがたいアドバイスを頂いてもなお、わたしは有給休暇をたまにとってしまったり、遅刻をしてしまっていました…。
「行かなきゃ」と思うんですが体が動きません。
人がこわくて職場に行けないという日が周期的にやってきました。

職場の雰囲気に慣れ始める

とはいえ、職場の雰囲気に少しずつ慣れ始めている自分もいました。
職場に復帰して3カ月くらい経ったころから、対人恐怖症の症状が改善されてきた気がします。
依然として周囲は気になりましたが、恐怖感がだいぶ小さくなっていったんです。

たぶん職場の人たちに慣れたからだと思います。
仕事の会話をしたり、昼食をとったり飲み会に参加したりといったコミュニケーションをとっているうちに、他人への恐怖感が薄れたのでしょう。

またこのころ新しい彼女(現在の妻)が出来たというのも理由かもしれません。
男として自信がついてきて、仕事も頑張ろうという気持ちが高まったのを覚えています。

以前とくらべて目の前の仕事に集中できるようになり、公務員として働く手ごたえを感じ始めていました。
「対人恐怖症はつらいけど病気と付き合いながらでも働いていこう」と思えるようになったわけです。
そのいっぽうで「試用期間が終わって本採用になれば堂々と病気休暇がとれる」とも思っていましたが…(汗)。
とにかく、まずは試用期間いっぱいまで休まず出勤しようと決めていました。

退職勧告を受け公務員をクビに

ところが後日、決意もむなしく退職勧告を言い渡されることになります。
試用期間終了まであと1カ月くらいに迫ったある日のことでした。
職場に到着してすぐ上司に「明日から来なくて大丈夫だから…」と言われたんです。

衝撃が走りました。
昨日まで普通に仕事をしていたつもりだったのに、急にクビを言い渡されたのですから…。
「デスクまわりの片付けはやらなくていいから」とも言われ、すぐに部屋を出るよう急かされている感じでした。
周囲の視線が痛かったです…。

クビになった理由はやはり勤務態度でした。
有給休暇のとりすぎと遅刻のしすぎが採用取り消しにつながったんですね。
人事の担当者が試用期間中のわたしの勤務姿勢を評価し、不採用と判断したんでしょう。

理由は納得のいくものでしたが、退職勧告はなかなか飲み込めませんでした。
公務員として仕事をし続ける気になっていた矢先の出来事だったからです。
せっかくやる気が湧いてきたのになぜこのタイミングで…。

クビにされることで自分を否定される感覚にもなりました。
「あなたは社会では働けない」と言われているようで、社会不適合者として認定されてしまった気分になりましたよ。
公務員は民間企業のサラリーマンよりクビになりにくいというイメージもありましたし、余計にダメ人間とみなされている感じです。

くやしくて自分が情けなくて、職場からの帰り道では庁舎の非常階段の近くで号泣してしまいました。
上司が付き添ってハンカチを渡してくれたり気を使ってくれましたが、現実は変わりません。
「条件つき」採用の身にある新規職員にとって、納得できる理由がある以上は退職勧告を断る権利はないんです。

後日、自宅に上司や幹部職員がやってきて退職の手続きを行いました。
自主退職という扱いでしたが、クビにされたようなものです。
心の病気を理由に職員を解雇すると批判が出るからかもしれません。
しかしそもそも自分から退職を願い出ていたわけなので、希望が通ったと言えますね(苦笑)。

こうして試用期間の終了を前にして、わたしは公務員としての採用を取り消されたわけです。
新卒後わずか半年の公務員人生でした。

初出勤時は辞めたい一心でしたが、働く意欲が少しずつ湧いてきていたのでクビになったのは残念に思います。
試用期間での勤務態度をみれば退職勧告となるのは当然ですけどね。

ただ、職場に慣れても対人恐怖症は完治しませんでしたし、いずれ異動などのタイミングでまた視線恐怖症などの諸症状に苦しんだでしょう。
公務員を辞めさせられたことに未練はありません。